臨床の幅をひろげるKampo First Step

臨床の幅をひろげるKampo First Step アレルギー性鼻炎に使ってみよう
(日医ニュース No.1015, 12, 2003より転載)

鼻アレルギーは国民病

 わが国では、国民全体の20%が鼻アレルギーに罹患しているといわれる。若年者のスギ花粉に対する特異的IgE抗体保有率も50%に達し、今や国民病として問題視されている。
 鼻アレルギーは原則として、ダニなどを抗原とする通年性鼻アレルギーと花粉などを抗原とする季節性鼻アレルギーに分けられる。両者とも鼻粘膜の型アレルギーが原因であり、くしゃみ、鼻漏、鼻閉が特徴的症状である。スギ花粉単独の鼻アレルギーでも、目97%、耳54%、口腔63%、咽頭78%、気管支35%など、他部位との合併率が高く広範囲に及び患者さんを悩ませている。  

鼻アレルギーの治療

 鼻アレルギーの起因抗原はスギ花粉が多いが、ヒノキ、ハンノキ、ブタクサなどの花粉による重複感作も増えている。また都市の大気汚染、気密性の高い住居などの環境要因も大きい。さらにストレス等の心因的要因が加わり複雑な病態を呈する。最近では低年齢化傾向も目立ち、小児期からの長い人生を鼻アレルギーに悩む人も多い。医療機関を受診する花粉症患者を対象とした調査(今野ら1))によれば、現在受けている治療に「不満足」と答えた人が73.7%もいた。鼻アレルギーの治療は一般的に、ケミカルメディエーター遊離抑制作用をもつロイコトリエン拮抗剤、トロンボキサンA2拮抗剤、抗ヒスタミン剤、ステロイド剤、鼻内噴霧剤が用いられる。
 漢方薬ではいくつかの処方が適応するが、現在、小青竜湯が最も汎用される(図1)。
臨床の幅をひろげるKampo First Step アレルギー性鼻炎に使ってみよう 図1

小青竜湯のメカニズム

 小青竜湯は薬理学的にはケミカルメディエーター産生・遊離抑制作用、ケミカルメディエーター拮抗作用、鼻粘膜血管透過抑制作用などのアレルギー反応抑制作用を有することが解明されている(図2)。
 刺激状態での鼻汁の主な応答部位は鼻腺細胞と考えられるが、われわれはモルモット鼻腺細胞に対する小青竜湯の作用を膜レベルで検討した。その結果、小青竜湯はアセチルコリン(ACh)による細胞内Ca2+濃度の上昇を有意に抑制した2)図3)。Ca2+濃度の上昇は直接膜のK+、Cl-電流を活性化し鼻汁を分泌させるため、このイオン流入抑制作用が鼻アレルギーに対する小青竜湯のメカニズムの一翼を担っており、西洋医学的にみてもクリアカットに解明が進んでいる。
臨床の幅をひろげるKampo First Step アレルギー性鼻炎に使ってみよう 図2
臨床の幅をひろげるKampo First Step アレルギー性鼻炎に使ってみよう 図3

小青竜湯のEBM

 平成5〜6年、全国61施設が参加し、通年性鼻アレルギー患者220人(登録)を対象とした小青竜湯(TJ-19:9g/日分3×2週間投与)の二重盲検比較試験が実施された(馬場ら3))。その結果は、中等度以上の最終全般改善度は小青竜湯群が有意に優れていた。また、くしゃみ発作、鼻汁、鼻閉の症状別でもプラセボ群に比較して有意であった(図4)。  副作用では、眠気は認められず、消化器症状、頭痛、顔面浮腫などが4例あったが、プラセボ群との有意差はなかった。
臨床の幅をひろげるKampo First Step アレルギー性鼻炎に使ってみよう 図4

服用後の眠気なし

 一般に、抗ヒスタミン剤は眠気や口渇を訴えることが多い。これらは重篤ではないが日常生活のQOLを損なう場合が多い。基礎研究によれば、小青竜湯は中枢性のヒスタミンH1受容体に影響を及ぼさず眠気を誘発しないことが報告されている。したがって、患者さんの眠気などによる日常生活でのQOL低下を心配せずにすみ、臨床上極めて用いやすい薬剤である。
●文献
1)今野昭義, 他:診療と新薬, 38:57-64, 2001
2)池田勝久:漢方と最新治療, 7:311-313, 1999
3)馬場駿吉, 他:耳鼻臨床, 88:389-405, 1995

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