米国DDW2013 漢方関連では過去最多の26演題を発表(六君子湯は18演題)

 消化器領域では世界最大の学術集会、米国消化器病週間(Digestive Disease Week:DDW)が5月18日から21日まで、米国フロリダ州オーランドのOrange County Convention Centerで開催された。
 今回、漢方関連の演題としては、六君子湯が最も多く18演題、大建中湯5演題、半夏瀉心湯2演題、芍薬甘草湯1演題の計26演題が発表された。このう ち、六君子湯に関しては3演題がResearch Forumでの口演発表であり、いずれも会場は立ち見が出るほどの盛況で、フロアとの活発な議論が交わされた。また、大建中湯に関してはメイヨー・クリ ニックからポスター発表があり、漢方に対する世界的な関心の高まりが感じられた。
期 日 平成25年5月18日(土)〜5月21日(火) ※現地時間
会 場 Orange County Convention Center(フロリダ州オーランド)
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六君子湯(18演題)

Research Forum【Oral】(5月18日 14:18〜)<臨床>
A Randomized, Controlled, Double-Blind Clinical Trial of Rikkunshito Versus Placebo for Gastrointestinal Symptoms and Quality of Life in Patients With Proton Pump Inhibitor -Refractory Non-Erosive Reflux Disease: the G-Pride Study
加藤 元嗣 先生(北海道大学病院 光学医療診療部)

PPI難治性NERD患者の消化器症状とQOLに対する六君子湯のランダム化二重盲検プラセボ対照試験
 242例のPPI抵抗性NERD患者を対象に、55施設でPPI+プラセボ群とPPI+六君子湯群の比較試験を行った。六君子湯投与前、投与4週と8週後にF-スケール、GSRS、SF-8を用いてGERD症状、消化器症状QOL、健康関連QOLがそれぞれ評価された。六君子湯は、PPI抵抗性NERD患者の精神的QOLを高めた。また、女性や高齢者での運動不全型のGERD症状の改善(acid-related dysmotilityスコアの低下)に有効であることが明らかとなった。
Poster Session(5月20日 8:00〜)<臨床>
Stimulation of Appetite by Rikkunshito, a KAMPO MEDICINE, Increases Vitality in Patients With Functional Dyspepsia
楠 裕明 先生(川崎医科大学 総合臨床医学)

六君子湯で食欲が改善した症例は活力Vitalityスコアも増加する
 16例のFD患者を対象に、14日間の六君子湯投与前後でShort-Form Health Survey-8(SF-8)で健康関連QOL尺度を、5段階のLikert scaleを用いて食欲の変化を評価した。また、超音波法を用いて胃運動機能検査を行った。六君子湯投与前後で食欲が改善したFD患者は、非改善群と比較してVitalityスコアと胃排出率が有意に上昇していた。
Poster Session(5月20日 8:00〜)<臨床>
Efficacy of Rikkunshito on Anorexia in Chronic Hepatitis C Patients During PEG-IFN/RBV Therapy
新井 誠人 先生(千葉大学大学院医学研究院消化器・腎臓内科学)

PEG-IFN/RBV療法中の慢性C型肝炎の食欲不振に対する六君子湯の影響
 C型慢性肝炎症例21例に対して、PEG-IFN+RBV療法開始1週後に食欲不振が出現した14例に対して六君子湯7.5g/日(R群)もしくはドンペリドン30mg/日(D群)を2週間投与し、食欲スコアと血中グレリン濃度を測定した。R群は観察開始時を1とした食欲スコア比を有意に改善したが、D群では改善が認められなかった。食欲不振を呈した症例では、六君子湯群で症状が改善する傾向を認めたが、血中アシルグレリン値の変化を伴うものではなかった。
Poster Session(5月18日 8:00〜)<基礎>
A Novel Rat Cachexia Model With Possible Ghrelin Resistance Made by Inoculation of a Gastric 85as2 Cancer Cell Line: a Traditional Japanese Medicine Rikkunshito Ameliorates Cachexia Symptoms by Potentiation of Ghrelin Receptor-Mediated Signaling
上園 保仁 先生(国立がん研究センター研究所 がん患者病態生理研究分野)

胃がん細胞株85As2の移植によって作製したグレリン抵抗性を有する新規がん悪液質モデルラット:六君子湯はグレリン受容体シグナルの増強によって悪液質を改善する
 我々が確立したヒト胃がん細胞MKN-45由来の85As2細胞移植による新規がん悪液質モデルでは、グレリン抵抗性が惹起されていることが示唆された。六君子湯は、本モデルにおける食欲不振などの悪液質症状を改善した。そのメカニズムとして、六君子湯ならびにその含有成分のatractylodinが、グレリン受容体発現細胞におけるグレリンシグナリングを増強することを示した。以上より、六君子湯はグレリン受容体活性を増強させることで、グレリン抵抗性を示すがん悪液質を改善する可能性が示された。
Poster Session(5月19日 8:00〜)<基礎>
Involvement of Ghrelin Signaling Dysfunction in Acute RESTRAINT Stress-Induced Delayed Gastric Emptying
大西 俊介 先生(北海道大学大学院医学研究科)

急性拘束ストレスによる胃排出遅延にはグレリンシグナル伝達障害が関与する
 急性拘束ストレス下の消化管機能におけるグレリンの役割と六君子湯の効果について検討した。マウスに拘束ストレス負荷60分後、胃排出能は有意に低下した。また、血中および視床下部のデスアシルグレリンレベルが有意に増加したが、アシルグレリンレベルには変化がなかった。六君子湯またはグレリンの投与により低下した胃排出能が改善したが、六君子湯の効果はグレリン受容体拮抗剤投与によって消失した。急性拘束下ではアシルグレリンの作用がデスアシルグレリンの増加を介してマスクされている可能性が示唆された。
Poster Session(5月19日 8:00〜)<基礎>
Gender Differences in the Action Mechanisms of Rikkunshito, a Ghrelin Signaling Enhancer, on the Improvement of Food Intake After Exposure to a Novel Environmental Stress in Aged Mice
山田 ちひろ 氏(ツムラ研究所)

Ghrelin enhancer, rikkunshitoの老齢の新奇環境ストレスモデルマウスに対する摂餌量改善効果の性差およびそのメカニズム
 新規環境ストレス後、雄性老化マウスの摂食量は低下したが、雌性老化マウスは雄性ほど低下しなかった。六君子湯投与はこの摂食量低下を有意に抑制した。ストレス後の血漿アシルグレリン値、視床下部NPY mRNA発現は、六君子湯の投与により雄性老化マウスで増加あるいは増加傾向であったが、雌性老化マウスでは変化しなかった。六君子湯は、雄性老化マウスにおけるストレスによる摂食低下を、グレリンシグナルの改善を介して抑制したが、雌性マウスでは異なるメカニズムを介している可能性が考えられた。
Poster Session(5月19日 8:00〜)<基礎>
Rikkunshito, Japanese Traditional Medicine, Reduces Urocortin 1-Induced Anorexia and FOS Expression in the Cranial Nerve Nuclei of Autonomic Nerves
屋嘉比 康治 先生(埼玉医科大学総合医療センター 消化器・肝臓内科)

六君子湯はウロコルチンが誘発する食欲不振や自律神経の脳神経核上Fos発現を抑制する
 六君子湯が自律神経の機能に影響を及ぼしているかを、ウロコルチン誘発ストレスモデルを用いて脳内のc-Fos発現に対する影響によって検証した。六君子湯は末梢から中枢への迷走神経の刺激を抑制していた。さらに満腹中枢であるPVMへの刺激入力の抑制が中枢から末梢への交感神経の活性を抑制しているのかもしれない。六君子湯は中枢の自律神経インバランスを改善することにより、食欲不振やグレリン分泌低下を回復させているのかもしれない。
Poster Session(5月19日 8:00〜)<基礎>
5-HT2B Receptor Is Involved in the Regulation of Gastric Accommodation: a Lesson From a Model of Gastric Accommodation Using Conscious Guinea Pigs
大島 忠之 先生(兵庫医科大学 消化器内科

意識下モルモットを用いた胃アコモデーションモデルからの教え:5-HT2B受容体は胃アコモデーションの制御に関与する
 胃適応性弛緩に対する一酸化窒素(NO)とセロトニン(5-HT)2B受容体との関連を検討した。胃適応性弛緩はNOによって促進され、一方5-HT2B受容体の活性化により抑制されたことから、相互のバランスで制御されている可能性が示唆された。また、六君子湯、ならびに含有成分で5-HT2B受容体拮抗作用を有するイソリクイリチゲニンは胃適応性弛緩の障害を有意に改善した。
Poster Session(5月20日 8:00〜)<基礎>
Activation of Corticotropin-Releasing Factor 2 and Melanocortin-4 Receptors Mediates the Persistent Loss of Appetite Induced by Stress Loading in Advanced Age Mice
武田 宏司 先生(北海道大学大学院薬学研究院)

加齢マウスのストレス負荷による持続的な食欲不振メカニズムはCRF2ならびにメラノコルチン4受容体の活性化によって仲介される
 新奇環境ストレスにより、加齢マウスでは若齢マウスと比較して顕著な摂食行動が低下した。六君子湯は若齢、加齢マウスのストレス性摂食抑制を改善し、一部の成分にCRF1受容体の拮抗作用が観察された。また、本研究で加齢マウスにおける持続的な摂食低下にはCRF1とCRF2受容体が関与し、CRF1は初期、CRF2は後期の摂食低下に関与することが示唆された。
Poster Session(5月20日 8:00〜)<基礎>
Serotonin 2C Receptor Antagonism Improves Stress-Induced Anorexia in Aged Mice
武藤 修一 先生(苫小牧市立病院 消化器内科/北海道大学大学院薬学研究院)

六君子湯は、セロトニン2C受容体拮抗作用により加齢マウスにおけるストレス由来の食欲不振を改善する
 加齢マウスを新奇環境ストレスに暴露し、選択的な5-HT2CRアンタゴニストおよび六君子湯の作用を調査した。六君子湯または5-HT2CRアンタゴニストは、新奇環境ストレスを負荷した加齢マウスにおいて、摂餌量低下ならびにストレスホルモン濃度の上昇を抑制した。5-HT2CR亢進が、加齢マウスの不安様反応に強く関与し、六君子湯は5-HT2CRを抑制することによって加齢マウスにおける新奇環境ストレス負荷時の摂食量低下を抑制したと考えられた。
Poster Session(5月20日 8:00〜)<基礎>
Enhancement of Ghrelin Secretion Is a Potential New Therapy Against Stress-Induced Functional Abnormality of the Upper Gastrointestinal Tract
屋嘉比 康治先生(埼玉医科大学総合医療センター 消化器・肝臓内科)

グレリン分泌増強はストレス性上部消化管機能異常に対する新しい治療法の候補である
 ストレスは機能性胃腸障害の発症や症状の悪化に関連することが知られている。ストレスモデルに対する外因性アシルグレリン投与あるいは内因性グレリン増強が消化管運動機能異常を改善するかどうかを明らかにし、グレリン増強作用を有する薬剤のFD様症状に対する治療薬としての可能性を追求した。外因性のアシルグレリン補充ならびに六君子湯はグレリン分泌増加を介し、上部消化管運動機能異常を改善することが示唆され、機能性胃腸障害に対する治療薬になる可能性がある。
Poster Session(5月20日 8:00〜)<基礎>
Cancer-Related Gastrointestinal Dysmotility Is Mediated by the Suppression of Ghrelin-Neuropeptide Y Signaling via Serotonin 2C Receptor in the Hypothalamus
網谷 真理恵 先生(鹿児島大学大学院医歯学総合研究科 心身内科学分野)

癌に伴う消化管運動不全は、視床下部におけるセロトニン2受容体を介したグレリン-ニューロペプチドYシグナルの抑制によっておこる
 癌に伴って発症する消化管運動不全は、中枢セロトニン2c受容体シグナルが視床下部NPYニューロンからのグレリンシグナルを減弱させ、迷走神経活動を低下させることによって起こる事が示唆された。六君子湯は、一部中枢への作用を介して消化管運動を改善すると考えられた。
Poster Session(5月20日 8:00〜)<基礎>
Rikkunshito Ameliorates Anorexia and Cachexia by Ghrelin Secretion via Serotonin 2B Receptor Antagonism in Cachexia Model of Pulmonary Fibrosis
柳 重久 先生(宮崎大学医学部)

六君子湯は肺線維症における悪液質モデルでセロトニン2B受容体拮抗作用を介するグレリン分泌によって悪液質と食欲不振を改善する
 ブレオマイシンにより悪液質モデルを作製し、六君子湯の効果を検討した。六君子湯はセロトニン2B受容体を介して血中グレリン濃度を改善させ、摂餌量・体重を改善させることが推測された。
Research Forum【Oral】(5月20日 8:45〜)<基礎>
Intracerebroventricular Urocortin 1-Induced Suppression of Plasma Ghrelin Levels Involves Peripheral α2-Adrenergic Receptor in Rats
屋嘉比 康治 先生(埼玉医科大学総合医療センター 消化器・肝臓内科)

ラットにおけるウロコルチン脳室内投与後の血中グレリン濃度低下には末梢の交感神経α2受容体が関与している
 ウロコルチン脳室内投与後の自律神経入出力に関わる脳内の部位の神経活性、迷走神経切断がグレリン分泌に与える影響について検討した。さらに、交感神経受容体のグレリン分泌および摂食への関与について検討した。ウロコルチンによるアシルグレリン分泌抑制は、迷走神経遠心路ではなく、交感神経が仲介しておりそれが摂餌低下を引き起こしていることが示唆された。さらに、中枢ではなく末梢の交感神経α2受容体への刺激を介していることが示唆された。六君子湯含有成分の一部にα2受容体拮抗作用が認められているため、これがグレリン分泌低下抑制の機序の一つであるかもしれない。
Poster Session(5月21日 8:00〜)<基礎>
Rikkunshito Prevents Levodopa-Inhibited Gastric Motility in Fasted Rats
Lixin Wang 先生(Medicine/Digestive,UCLA)

六君子湯は、絶食下のラットにおいて、L-dopa誘発胃排出遅延を抑制する
 六君子湯は、パーキンソン病治療薬であるレボドパによる胃運動障害に対して、少なくとも一部はグレリンを介した運動亢進作用を示すことが明らかになった。六君子湯が、レボドパを処方されたパーキンソン病患者の胃運動障害の治療に応用できる可能性が示唆された。
Poster Session(5月21日 8:00〜)<基礎>
Activation of the Hypothalamic Serotonin/Corticotropin-Releasing Factor Pathway Induces Ghrelin Insufficiency and Resistance in Cancer Cachexia Syndrome
藤塚 直樹 氏(鹿児島大学大学院医歯学総合研究科 心身内科学分野/ツムラ研究所)

視床下部におけるセロトニン/CRF経路の活性化が、癌悪液質におけるグレリン分泌不全と抵抗性を引き起こす
 癌悪液質では、飢餓に対する適応反応が減弱し摂食量が低下する。この食欲不振には、視床下部セロトニン・CRFシグナル系の過剰亢進によるグレリン抵抗性と末梢および中枢グレリンの低下が関与していることが明らかとなった。グレリンシグナル増強作用を有する六君子湯は、食欲不振の改善に効果的であると考えられた。
Poster Session(5月21日 8:00〜)<基礎>
Establishment of a Severely Cachexic Rat Model With Possible Ghrelin Resistance by Using a Novel 85as2 Cell Line Developed by Repeated Peritoneal Dissemination After Orthotopic Implantation of the Human Gastric Cancer Cell Line Mkn-45
寺脇 潔 氏(国立がん研究センター研究所 がん患者病態生理研究分野/ツムラ研究所)

ヒト胃がん細胞株MKN45の移植によって発生させた85As2細胞を用いたグレリン抵抗性を有する新規がん悪液質モデルラットの確立
 ヒト胃がん細胞MKN-45から、悪液質誘発細胞株MKN45cl85をクローン化し、さらにMKN45cl85同所移植による腹膜播種細胞から85As2細胞株を樹立した。85As2細胞は、親株のヒト胃がん細胞よりも悪液質誘発能が促進しており、我々は85As2細胞による新規がん悪液質動物モデルを確立した。本がん悪液質モデルでは、グレリン単回投与による摂食量亢進作用が減弱していたことから、グレリン抵抗性が惹起されていることが示唆された。六君子湯は本モデルの悪液質症状を改善した。
Research Forum【Oral】(5月21日 16:15〜)<基礎>
The Dual Action of the KAMPO MEDICINE Rikkunshito Offers a Promising New Approach for the Treatment of Ghrelin Resistance in Cancer Anorexia-Cachexia
網谷 東方 先生(鹿児島大学大学院医歯学総合研究科 心身内科学分野)

六君子湯のデュアル作用は、癌悪液質におけるグレリン抵抗性に対する新しい治療手段となりうる
 六君子湯は、セロトニン誘発によるCRFニューロン活動を抑制する一方、グレリンによるNPYニューロン活動を増強した。これらのデュアル作用を有する六君子湯は、癌に伴う食欲不振や悪液質などのグレリン抵抗性疾患の治療に有用であることが示唆された。

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