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Medical Q(第204号 平成19年11月20日)
インフルエンザ患者に対する麻黄湯の有効性を検討
第39 回日本小児感染症学会 発表(11月9〜11日、パシフィコ横浜)

麻黄湯にはオセルタミビルと同等の効果
 今年もインフルエンザシーズンの到来時期になりました。一般にインフルエンザ治療には、オセルタミビルなどの抗ウイルス薬が使用されていますが、一昨年から10 歳代の患者でオセルタミビルによる異常行動が相次いで報告され、厚生労働省は本年3 月に緊急安全性情報を出して10 歳以上の未成年患者への使用を原則的に禁止しました。特に小児科診療においては不安な冬を迎えることになったと言えます。
 そうした状況の中で、抗ウイルス薬に代わるインフルエンザ治療薬として麻黄湯に注目した臨床研究報告を、河村研一氏(かわむらこどもクリニック院長、富士市)が第39 回日本小児感染症学会(11 月9 〜 11 日、パシフィコ横浜)で発表されました。この発表は、2007 年2 〜 6 月に同クリニックを受診したインフルエンザ患者129 例を対象に、麻黄湯とオセルタミビルによるA 型およびB 型インフルエンザに対する有効性を比較検討したものです。そこで今回、麻黄湯を使うことになった経緯やインフルエンザに対する麻黄湯の効果などについて、その発表内容を中心に河村氏にお聞きした。
河村 研一 氏
かわむらこどもクリニック
院長 河村 研一

インフルンザ治療に麻黄湯を使用したきっかけ
 インフルエンザ治療には、アマンタジン、オセルタミビル、ザナミビルが主に使用されています。しかし、A 型インフルエンザ治療に使用されるアマンタジンには耐性増加の報告があり1)、オセルタミビルは1歳未満での安全性が確立していないうえ、因果関係は不明ですが、10 歳代の内服者における異常行動の報告が相次ぎました。ザナミビルも吸入困難例や4 歳以下の幼児に対する安全性は確立していません。これらの理由から、オセルタミビルに代わる薬剤はないかと昨年より探していましたが、インフルエンザに適応のある麻黄湯に出会い、対症療法だけよりはよいと思って2007 年2 月から使用を開始しました。
 そして今回の臨床研究は、麻黄湯がインフルエンザ治療に有効であるか否かを見極めることを目的に行いました。

麻黄湯投与群とオセルタミビル投与群で比較検討
 2007 年2 月22 日〜 6 月13 日に当クリニックを受診し、インフルエンザ迅速診断キットで陽性であったインフルエンザ患者129 例(0.5 〜 14.6 歳)の対象者を、親の薬剤選択希望により麻黄湯投与群(麻黄湯群)とオセルタミビル投与群(オセルタミビル群)に分けました。さらに、インフルエンザ迅速診断キットの結果からA 型インフルエンザ群(A 型麻黄湯群・A 型オセルタミビル群)とB 型インフルエンザ群(B 型麻黄湯群・B 型オセルタミビル群)の4 群に振り分けました。麻黄湯は0.08 〜 0.19g/kg/日を分3(最大7.5g/日)で投与し、オセルタミビルは4mg/kg/日を分2(最大150mg/ 日)で投与しました。必要に応じて抗ヒスタミン剤、鎮咳剤、去痰剤は併用しています。
 対象者には24 時間記載可能な経過表を渡して、任意測定時体温、内服時間、患者状態・異常行動等を随時記入してもらい、不足分は診察時の問診で補いました。発熱は体温が37.5℃以上に上昇したものとし、安定して37.5℃未満に下がった場合を解熱としました。全身症状の消失は頭痛、倦怠感、食欲不振などの消失を目安としました。

麻黄湯投与B型インフルエンザで全身症状消失時間が有意に短縮
 まずA 型インフルエンザでは、年齢を除き、最高体温、内服開始時間(発症後)、解熱時間(内服後)、発熱期間、全身症状消失時間(内服後)、全身症状有期間(発症後)の6 項目には麻黄湯群・オセルタミビル群の間で有意差は認めませんでした(図1)。他方、B 型インフルエンザでは、内服開始時間は麻黄湯群が13.5 時間遅く内服を開始し(p<0.05)、解熱時間は有意差がなかったものの、麻黄湯群で10.7 時間早く解熱しました。また、全身症状消失時間は麻黄湯群が25.9 時間早く消失しました(p<0.05)(図2)。なお、今回は抗インフルエンザ薬無投与の希望者がいなかったため、抗インフルエンザ薬を使わない症例(対症療法群)として高崎らの2002 〜 2003 年のデータ2)を引用しました。

図1 A型インフルエンザの各群間の比較
 
図2 B型インフルエンザの各群間の比較


内服開始時間と発熱期間はA型オセルタミビル群とB型麻黄湯群で相関あり
 内服開始時間と解熱時間、発熱期間との関係をみますと、内服開始時間と解熱時間の相関は、A 型麻黄湯群、A 型オセルタミビル群、B 型麻黄湯群、B 型オセルタミビル群の4 群ともに認めませんでした(図3)。発熱期間は、A 型インフルエンザとB 型インフルエンザでは内服開始時間で効果の反応が異なっていました(図4)。また、4 群ともに内服開始時間と全身症状消失時間の相関は認めませんでした(図5)。ちなみに、麻黄湯内服量と解熱時間および全身症状消失時間の相関はA型、B 型ともに認めていません。

図3 内服開始時間と解熱時間
 
図4 内服開始時間と発熱期間
 
図5 内服開始時間と全身症状消失時間


麻黄湯にはオセルタミビルと同等の効果
 以上の結果から、A 型およびB 型インフルエンザに対して、麻黄湯にはオセルタミビルと同等の効果があると言えます。さらに全身症状を考慮すると、それ以上の効果を期待できる薬剤と考えられます。なお、オセルタミビルは発熱後48 時間以内の早期内服が奨励されていますが3)、今回の研究では発症後48 時間経過後の症例が少ないため、内服開始までの時間と効果の有無の関係は比較検討できませんでした。今後の検討課題です。

1)河合直樹, 他: 過去5シーズンにおけるアマンタジンの有効性の推移. インフルエンザ 8: 217-221, 2007.
2)高崎好生, 他: 小児におけるインフルエンザの治療. インフルエンザ 6: 41-50, 2005.
3)河合直樹, 他: オセルタミビルの有効性と影響因子―年齢, ウイルス型, 投与開始時期について―. 感染症学雑誌 77: 423-429, 2003.


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