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MEDICAMENT NEWS 2005年9月5日 (月)
学会ハイライトより

麻黄湯が小児インフルエンザ感染症の新たな治療戦略の1つに 小児インフルエンザ感染症に対する麻黄湯の効果
  自衛隊仙台病院小児科 窪 智 宏 氏

 第56回日本東洋医学会学術総会(会頭:富山医科薬科大学・寺澤捷年氏)が、5月20〜22日、富山国際会議場ならびに富山市民プラザにおいて開催された。今回は、自衛隊仙台病院小児科・窪 智宏氏ほかの発表「小児インフルエンザ感染症に対する麻黄湯の効果」の要旨を紹介する。窪氏は、麻黄湯の小児インフルエンザ感染症への効果を抗インフルエンザ薬オセルタミビルとの併用やオセルタミビル不適応例への投与により検討した。その結果、麻黄湯は小児インフルエンザ感染症の発熱時間短縮に有意な効果を示した。インフルエンザ治療の新たな治療戦略の1つに加えられるべきであると、窪氏は今後の大規模臨床試験の必要性を訴えた。

小児A型インフルエンザへの麻黄湯の効果を検証
 近年、抗インフルエンザ薬オセルタミビルが開発され、インフルエンザ治療に不可欠な存在となったが、1歳未満の乳児への投与適応がないことや不応例の増加も見られる。
 一方、よく乳児の鼻閉に対して用いられる麻黄湯がインフルエンザ様疾患に対しても効果があることは、一部の医師の間では以前から経験的によく知られており、麻黄がA型インフルエンザウイルスの発育を阻止するとの報告もある(Mantani N, et al:Anitvir Res, 1999)。
 そこで窪氏らは、麻黄湯の小児インフルエンザA型感染症に対する有効性を検討した。


38℃以上の発熱を含むインフルエンザ様症状,5カ月から13歳までの小児, 49症例を対象に
 004年1月から5月までに当該施設を受診した38℃以上の発熱を含むインフルエンザ様症状を呈した5カ月から13歳までの症例を対象とした。

 方法は、1歳以上で迅速診断キット(キャピリアFlu A, B)の判定により陽性であった症例をランダムにわけ、(1)オセルタミビル投与群(4mg/kg/日 分2)と(2)麻黄湯・オセルタミビル併用群(麻黄湯(TJ-27);0.18/kg/日 分3)とした。また、オセルタミビルの適応とならない1歳未満の症例、および迅速キットで陰性の症例は(3)麻黄湯(単独)投与群とした。最終的に服用できない症例、ウイルス分離およびRT-PCRの結果からインフルエンザ感染が確定しなかった症例を除外し、49症例(男:女=24:25、オセルタミビル投与群n=18、麻黄湯・オセルタミビル併用群n=14、麻黄湯投与群n=17)が検討の対象となった(図1)。なお、保護者には服薬状況と体温測定記録を依頼し、各群間で治療開始から解熱(37.2℃以下)までの時間をWilcoxon's rank sum testにより統計学的に比較した。


麻黄湯単独群,併用群にて発熱時間が有意に短縮
 平均年齢、男女比、治療開始までの有熱時間、発熱の程度、予防接種歴などの背景に各群間で統計学的な差は見られなかった(表)。

 3群間で治療開始から解熱までの時間を見てみると、オセルタミビル投与群では平均31.9時間、麻黄湯・オセルタミビル併用群では平均21.9時間、麻黄湯単独群では17.7時間で解熱効果が得られた(図2)。各群とも有害事象の発生はなかった。

麻黄湯の効果への考察
 麻黄湯は、麻黄、杏仁、桂皮、甘草の4種類の生薬から構成される。最後に、窪氏は過去の報告から麻黄湯の有効性に関しての文献的検討を行った。

 C型肝炎のインターフェロン治療の際にインフルエンザ様症状が副作用として発現する場合があるが、構成生薬の麻黄(Ephedrae Herba)がIL-6やIL-1 receptor antagonistを増加させ、症状を緩和するとの報告がある(Kainuma M, et al:Phytomedicine, 2004)。
 また、桂皮(Cinnamomi Cortex)がIL-1α産生を抑制し解熱効果を示す(Kurokawa M, et al:Eur J Pharmac, 1998)、あるいはIL-12産生を増強し肺炎の重症化を抑制する(Kurokawa M, et al:Anitvir Res, 2002)との報告も見られる。
 甘草(Glycyrrhizae Radix)についてはマイトジェン活性を有しているため、リンパ球への作用も考えられる(大嶽ほか:肝臓、2003)。

 これら麻黄、桂皮、甘草の3つの生薬は小青竜湯、湯にも含まれており、小青竜湯については、抗インフルエンザIgA産生を促進するという報告がある(Nagai T, et al:Int J Immuno-pharmac、1994)。
 以上から、麻黄湯はインフルエンザウイルスへの直接作用の他に、免疫宿主側に働きかけることによって、抗インフルエンザ効果を示したのではないかと推測される。

大規模試験の必要性
 小児A型インフルエンザ感染症における麻黄湯投与単独群ならびに麻黄湯併用群の有熱時間は、オセルタミビル単独投与群に比して有意に短かった。オセルタミビル耐性の問題もあるため、今後、大規模な二重盲検無作為化比較試験を行い、インフルエンザ感染症に対する治療戦略として麻黄湯の効果の意義を十分検討する必要があると窪氏は結論した。



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