漢方服薬指導Q&A


福田整形外科医院 福田佳弘 先生
(漢方調剤研究 5(6)10,1997 より転載)
*先生方のご所属等は掲載当時のまま表記させて頂いております。

 附子中毒の防止には、まず附子配合剤の投与目標を的確に捉えることが大切です。診断が曖昧ですと、思わしくない症状が現れたとき、それが副作用(中毒)によるものか、処方の決定の誤りによるものか決め難いからです。

 投与目標の症状は脈(微細、沈弱、沈細数)、寒がり,手足の冷え、めまい、痛み、便臭の少ない下痢、 、煩躁(不眠、動悸〉や外傷、手術、分娩時の失血などです(表)。

 投与禁忌の症状は急性熱性疾患の陽病期にみられる強く触れる頻脈、悪風や悪寒のない高熱、腹満、便秘などです。慢性疾患では、病態が複雑化し、陰陽虚実の証が混在していることが多く、禁忌とすべき症状を一律に挙げることはできません。しかし、原則として陽病で腹力が充実し、脈が強く触れる実証には用いません。また心筋の刺激伝導系の障害(不整脈)がある人には注意が必要です。さらに、附子単味の副作用として、大黄、桃仁、牡丹皮、芒硝、牛膝とともに子宮収縮作用があり、妊婦には禁忌とされています。したがって、附子配合剤の妊婦への投与は避けるべきです。

 用量の基準は0.5〜1g/日とされており、これを参考に用法を会得すべきです。

 また、 、桂枝加朮附湯、 、八味地黄丸、牛車腎気丸、大防風湯、真武湯、麻黄附子細辛湯、附子理中湯のような附子配合エキス剤の薬効が不十分なときには、さらに附子末を1〜2g加えて用います。陰病の処方である大建中湯、小建中湯、当帰建中湯、当帰四逆加呉茱萸生姜湯、疎経活血湯、 、半夏白朮天麻湯、茯苓飲、補中益気湯、十全大補湯、五積散、四君子湯などにも附子末の加味を試みてよいと思います。

 添付文書には、副作用による症状として心悸亢進、のぼせ、舌のしびれ、悪心等が記載されています。私は日頃多くの症例に附子末を用いていますが、心悸亢進、のぼせ、ときに顔面紅潮を僅かにみとめるだけで、舌のしぴれ、悪心はきわめて稀です。そして、これらの症状はおおかた服用の中止のみで消失します。もし回復が遅ければ、硫酸アトロピン、塩酸リドカイン、塩酸プロカインアミドおよびステロイドなどを投与します。再び同一処方で治療するには、副作用出現時での量を減じ、投与期間の延長を計り、漸次増量を試みます。そのようにしますと、先の副作用出現時の量に達しても、不快な症状はほとんど現れません。もし不快な症状が現れたときには、処方が適応していない、いいかえれば誤治によるものかもしれません。したがって、いま一度病者を精診することが肝要です。