漢方服薬指導Q&A


麻生セメント(株)飯塚病院漢方診療科部長 三潴忠道 先生
(漢方調剤研究 5(1)10,1997 より転載)
*先生方のご所属等は掲載当時のまま表記させて頂いております。

 治療する対象により異なりますが、一般に考えられているよりは速効性があります。ただし、現在漢方治療を受ける患者さんのほとんどが慢性難治性疾患ですので、長期間の服用を必要とすることが多いのだと思います。

 まず、急性疾患では驚くほどの速効性を発揮することがしばしばです。急性疾患の代表であるかぜ症候群では服用直後、遅くても15分以内に頭痛や咽頭痛が楽になったり咳がおさまるなどといった効果が自覚されます。早い時には飲んでいる最中から気分がよくなります。胃腸以外の、鼻・口腔粘膜からも成分が吸収されるものと推測されます。したがって、私どもの外来では常にポットに熱湯を用意し、熱発などの際にはその場で漢方製剤を溶いて服用して頂きます。そして15分ほどで再度診察をし、処方の適否を判定しています。効果があれば何日分かを処方するわけですが、ごく初期なら多くは1〜2回の服用で完治します。上腹部痛の柴胡桂枝湯,四肢攣急に 、登山中などの疲労時に十全大補湯など、熱性疾患以外にも漢方薬が速効を呈する実例は多く、プライマリー・ケアにも有用です。

 慢性疾患では効果の判定に時間がかかるのは当然で、まして完治・略治を目指せば長期間の治療が必要となることがほとんどです。ただし効果の発現は意外に早く、厳密なあるいは注意深い観察をしていると、一般には2週間程度で改善の兆しが出現します。慢性腎不全患者に対する補中益気湯の自験では、2週間後には血清クレアチニン値の低下が認められました。石田らの報告では、しびれなどの糖尿病性神経障害に対する牛車腎気丸の効果出現率は服薬開始2週間後までに50%以上に達し、その後1年経過しても十数%増加しただけです。アトピー性皮膚炎の幼児が服薬を開始したその夜から久々に夜泣きをせず、両親に感謝された経験もあります。しかし臨床的に十分な満足を得るためには、さらに服用の継続が必要です。

 より早く十分な効果を得るためには、服用方法も重要です。古典では多くの漢方方剤に温服と指示があるように、漢方製剤も湯に溶いて食前または食間に服用すべきです。小青竜湯を水で服用しても無効であった風邪に、今度はお湯に溶いて服用させたところ治った例などもあります。また、『傷寒論』の桂枝湯方に記載されているように、急性期には2〜3時間おきに服用するなど、症状に応じた措置が必要でしょう。

 外科的摘出や鎮痛剤の注射などに比較すれば、特に慢性疾患における漢方薬の効果発現は遅いように感じますが、実際は意外に早いものです。強皮症の皮膚所見改善や慢性腎不全の腎機能障害進展抑制効果など、慢性疾患では効果判定に月単位の観察を要することもあります。しかし、漢方薬だから遅効性だと信じている患者さんに絶えず適切な漢方処方の運用を心がけ、より早い効果発現をめざすべきでしょう。



参考文献
1)三潴忠道ほか:末期慢性腎不全患者の漢方治療.現代東洋医学(臨増),12(1):75〜78,1991
2)石田俊彦ほか:糖尿病性神経障害に対する牛車腎気丸の効果について.薬事新報,1830:35〜38,1995