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シンポジウム 2 大建中湯 various application
4.大建中湯の肝循環動態に対する効果
演者:
徳島大学大学院
ヘルスバイオサイエンス研究部・臓器病態外科
森根 裕二 氏
 ツムラ大建中湯(TJ-100)は,乾姜(50%),人参(30%),山椒(20%)の3つの生薬からなり,臨床の場では腸管蠕動の亢進を目的として,癒着性イレウス,麻痺性イレウスなどに使用され効果的である.最近では,臨床報告として肝切除後における高アンモニア血症の改善,動物実験での腸管血流増加作用が報告されている.
 TJ-100の効能・効果を考えると,人参が腸管吸収後に消化管運動亢進作用を示すのに対し,山椒と乾姜は胃粘膜・腸粘膜を刺激(血流を介さない)し,投与後30分以内に山椒は小腸に対して,乾姜は胃に対して運動亢進作用を発揮する.特に乾姜の主成分の1つであるshogaolは,消化管内に存在するCGRP(calcitonin gene related peptide:血管拡張因子) receptorを介して腸管血流を増加させるという.
 今回,森根氏らはTJ-100が腸管蠕動亢進作用とともに腸管血流増加作用を有することから,肝門脈血流に対する効果について検討を行った.

健常者,肝硬変症例,生体肝移植症例で肝門脈血流の変動を検討

 対象症例は,健常成人(n=5),肝硬変患者(n=5),生体肝移植患者(n=3)であり,TJ-100 群では同剤2.5 gを微温湯100 mLで服用,コントロール群は微温湯100 mLのみを服用させた(ただし,生体肝移植症例ではコントロール群はなし).その後,超音波ドップラー法を用い門脈血流が経時的(投与後0,10,20,60,120分)に評価された.
 検討項目は,門脈流速(M-VEL;cm/秒),門脈血流量(FV;mL/分),循環動態(平均血圧,脈拍数).門脈血流の測定は,門脈臍部(U-portion)と門脈右枝(AP-portion)で行っている.

3群ともにみられたTJ-100の顕著な効果

 健常者のTJ-100群では,投与後早期(30分以内)からM-VEL,FVともに増加がみられ,投与後20,30分ではコントロール群と比較し有意な差が認められた(図1).
図1 健常成人での検討
 肝硬変症例のTJ-100群では,M-VELは変動が軽度であったが,FVは投与後早期(30分以内)から有意に増加した (図2).
図2 肝硬変症例での検討
 生体肝移植症例においても,TJ-100の投与により,M-VEL,FVともに有意に増加していることが確認された(図3).
図3 生体肝移植症例での検討
 なお,3群ともTJ-100投与による平均血圧,脈拍への影響は認められなかった.

肝門脈血流増加作用に対するTJ-100の類洞拡張効果の関与

 森根氏は考察として,TJ-100の門脈血流増加作用は投与後早期から認められることから,腸管神経系を介した反応であることを示唆した.
 肝硬変症例において,FVの変動が軽度であったにもかかわらず,M-VELの増加を認めた結果については,類洞内皮細胞の拡張効果によるものと推測している.
 結論として森根氏は,肝への神経伝達系が分断されている生体肝移植症例においても,健常者・肝硬変症例と同等の門脈血流増加作用が認められたという結果から,TJ-100の肝門脈血流増加作用には腸管血流増加作用とともに肝類洞内皮細胞への刺激が関与することを強く示唆した.さらに,このTJ-100がもつ血流増加作用には肝障害を軽減させる可能性があることも指摘し,講演を終えた.
 総合討論においては,TJ-100の作用機序の研究について触れ,交感神経系を介した類洞の拡張により門脈血流が増加するという仮説は立てられるが,どの因子を検討していけばよいかは今後の課題であるとした.
編集・制作:株式会社ライフ・サイエンス
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